三つ数えろ

日本人の働き方とか社会保障についてせん妄状態で記述していきます

なぜ「出張先での性行為中の負傷」に労災が認められないのか

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「出張先での性行為中に負傷」、補償なし 豪最高裁判決 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 

この記事。本文を引用してみよう。

オーストラリア連邦最高裁は30日、出張先の宿泊施設で性行為中にけがをしたとして、労災保険給付の請求をしていた国家公務員の女性に対し、補償を認めない判決を下した。
氏名を公表していないこの女性は、雇用主が予約した部屋に宿泊。性行為中に照明器具が落下してきたことで鼻と口、歯にけがをしたほか、精神的な傷を負ったという。

出張中に性行為を行うことについては、遺伝子の地域的偏在の解消という視点から、また多様性の飽くなき追求という生物的本質においてなんら特別なことではなく、男性を問わず女性においても日常的に行われている行為であると考えるが、こと労災認定という点においては、それを認めないという司法判断がなされた。

 

残念なことに筆者はオーストラリアにおける労働諸法について詳しい知識を持ち合わせているわけではないが(というか、日本の労働諸法についても何も知らないわけだが)、googleやウィキペディアなど便利なインターネットを活用し、この件について、日本国内ではどのような判断が下されるか考察してみたい。 

 

 

 

当該事案(本稿では便宜上、「豪における出張中性行為中負傷事件」とする)のポイントは以下の通りである。

  • 出張中であった。
  • 雇用者の予約したホテルに宿泊中であった。
  • 性行為中の負傷であった。

この点に留意し、考察を進めよう。

 

国内法(労働者災害補償保険法)において、労災補償の対象には「業務災害」「通勤災害」の2分類があり、「出張」については、その移動中も含め包括的に業務と扱うため「業務災害」に区分されている。

 

「業務災害」は「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」と規定される。「業務災害」として認定されるためには、

  1. 前提として、労働者が使用者の支配下にある状態にあり(業務遂行性
  2. 次に、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをが認められることが必要(業務起因性

の2要件が必要となる。

 

「業務遂行性」を考える上ではいくつかの類型があるが、今回の事案においては「事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合」が該当する。出張中については、出張過程全般について事業主の支配下にあると考えられ、業務中はもちろん、休憩中の飲食や列車内での睡眠中の事故はもとより、業務後のホテルなどでの宿泊中の災害(宿泊中の火災、食事による食中毒など)でも業務遂行性が認められている。

 

次に「業務起因性(業務が原因で負傷したか)」があるかという点になる。

 

読者によっては、性行為は業務になんら関係性のない行為のように受け取られるかもしれない。しかし業務とは業務そのものだけを指すものではない。例えば、次のような行為も「業務」とみなされる。

  1. 本来の業務に付随する行為
  2. その労働者の職務から当然行なうことが予想される緊急行為
  3. 作業中断による生理的行為、又は反射的行為
     例)用便、炎天下での飲水、風に飛ばされた帽子を咄嗟に拾う行為など

経験上、性行為は生理的、反射的行為であると考えられるが、この要件には「積極的な私用・私的行為あるいは本人の恣意行為による場合を除き」という除外条件が規定されている。つまり論点としては出張中の性行為が「積極的な私用・私的行為あるいは本人の恣意行為による」ものか、「本来の業務に付随する行為または生理的行為、又は反射的行為」によるかという点になる。この点について議論が分かれるところだろう。

 

ここで判例主義にならい、2つの類似事案における判例を見てみたい。

 

判例①:(大分労基署長(大分放送)事件)
出張先で業務終了後に同行者らと飲酒を伴う夕食をとり、その後、宿泊施設内の階段を歩行中に転倒し死亡した。

 

判例②:(S61.4.18、S59労126)
出張先において会社の指定する宿に宿泊せず、街で知り合った女性と同伴ホテルに宿泊し、ホテル火災によって死亡した。

 

①の判例においては、出張先において食事の際に同僚と飲酒するといったことは度々ありうることとされ、「業務とまったく関連のない私的行為や恣意的行為」とは見なされないと解釈され労災認定を受けた。

 

②の判例において、会社が指定する宿に宿泊していなかったことなどから、本人の恣意行為とされ、労災認定は降りなかった。

 

今回の事案については、この女性は雇用者の予約したホテルに宿泊中であった。このためケースとしては①に近い。これが性行為中でなければ明らかに労災が降りるはずだ。

 

性行為と飲酒の間に本質的な違いはあるかという点は難しい問題だ。文頭で述べたとおり筆者は性行為については遺伝子的欲求に基づく度々ありうる行為であると考えるため、国内法においては労災認定が認められるのではないかと推測するが、読者の皆さんはどうお考えだろうか。

 

今日のポイント:出張中の性行為は控える。

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