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「コミュニケーション能力を高める」たったひとつの方法

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前々回の「会議が終わらない3つの理由」では、会議が終わらない理由のひとつとして、不確定要素について推測で議論することの非効率さを述べた。また前回の「会社が求める「コミュニケーション能力」とは何か」ではコミュニケーションの最大の目的が、相手の思惑の正しい把握(察すること)であると述べた。

 

相手の意志を、正確かつ包括的に理解することは、オフィスワーカーにとって生産的な業務を行う上で重要な能力のひとつだ。相手の指示や要求の理解が正しくなければ、その誤った認識の上に積み上げられたすべての行為は無駄になる(「そういう意味でしたか」という言葉を何度聞いたことか)。いわゆる「与件の整理」は、提案その他の業務におけるアウトプット行為すべての肝になるものだ。

しかしその肝を疎かにするケースが業務の中で散見される。なぜか。考えてみた。

 

自分自身もそうだった

 ひとつ思い出す話がある。私が前職においてコンサル会社の営業をやっていたときの出来事だ。会社自体は極めて高い専門性を誇っていたもの、私といえばただの兵隊営業だった。与えられた見込先リストを対して、セミナーの開催やテキスト販売、またコンサルティング自体の採用に関しての電話営業を、受話器と手をガムテープで固定された状態で一日中行っていた。見込みとなる顧客の大半は大手製造業や金融機関であった。会社の名前が知られているということもあって、営業自体はそれほど苦労することもなかったものの、他の電話営業を経験したことがない私としては飛び込みの電話営業はそれなりのストレスな業務であった。

 

ある日こんなことがあった。大阪のある企業に電話営業をしたところ興味があるのでぜひ会って話を聞かせてほしいという回答があった。当時、我々は東京を拠点として営業行為をしていたため、顧客の要望に応えるためには大阪まで出張する必要があった。営業部長にその旨を伝えてみると、案の定浮かない顔をする。確度もわからない案件の営業に、東京から大阪への旅費が無駄になる可能性を憂慮していたのだ。私は「大きな企業だ。これからの広がりも期待できる。会って話して信頼してもらうことから初めてはどうだろうか」と提案した。しかし営業部長は目先の数字にしか興味が無い。そこで部長が私にこう言った。

 

「交通費と宿泊費、先方が出せるか聞いてみて」

 

驚いた。まだ担当者に会ってもいない、初めて訪問する営業先に、しかもこちらからアプローチした先に「営業に行くから交通費と宿泊費を出せ」と言えと言うのだ。普通、ありえない。逆の立場だったら嫌味っぽく「文書でください」と要求するレベルの厚かましい話だ。私はもちろん、営業部長に四の五言ってその非常識さを暗に責めた。しかし「聞いてみて」の一点張り。私は一度席に戻り、散々悩み、時間をおいて再び部長に相談したものの、部長からは「なんでまだ聞いてないの?」という一言が返ってきただけだった。

 

結果はどうだったのか

結局、諦めて、聞いてみることにした。駄目に決まっている。怒られることはないかもしれないが、呆れるだろう。まぁしかし部長の指示だ。電話してやろうじゃないか。

 

結果はどうだったか。

こちらの要求は受け入れらえた。私の言葉に相手は一瞬驚いた様子だったものの、結局、旅費については先方が出すことを了承したのである(宿泊についてはさすがにその必要がなかったためやんわりと断られた)。

 

この結果に私は驚いた。この他にも、この営業部長にはいつも驚かされた。営業員の残業代を相手に請求したこともあった。人の心の機微や常識観念の通じないような人だった。そのむちゃくちゃな(と私が考える)要求は通るときもあったし、当たり前のように却下されることもあったが、彼の、

 

「まず聞いてみる。駄目ならその時考える」

 

という方針がブレることはなかった。

コミュニケーション不足の足枷は自分自身

結局、私は自分自身の中で葛藤し、時間を無駄にして自問自答を繰り返していた。自分の中で、自分の世界の、常識の、経験の範疇で、相手を判断しようとしていた。聞きたくなかった。なぜだろうか。馬鹿なことを聞けば、激しく拒絶される、怒られる、呆れられる、常識を疑われる、とどのつまり自分自身を否定されることを恐れたからだ。また、もしかしたら「聞くこと」で向き合わなければならない不都合な事実から、少しでも逃げたかったのかもしれない。

 

聞いてみるしかない

しかしコミュニケーションにおける成長の第一歩は、この「聞いてみる」という行為からしか始まらないのである。わからなければ、会って、電話して、メールで聞いてみる。直接、相手の意志を確かめる。リアクションが戻ってきて、初めてそのあとのことを検討する。あなたのコミュニケーション能力を高めたければ、四の五言っていないで、一番聞きづらいことを、相手に直接聞いてみよう。いくら終電近くまで飲んでいても「休憩する?それとも泊まっていく?」と聞く他にないのと同じように、聞いてみる。これしかない。

 

「単純な真実が、膨大な憶測から人を解放する」-ヴォーヴナルグ

 

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