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企業は離職率を開示するべき?

 

企業は離職率を開示するべき

 

求人の成功報酬も「要りません」 ヤフーの転職サイト  :日本経済新聞

ヤフーは12日から転職サイトの求人情報の成功報酬を無料にする。離職者数や残業手当などを顧客企業が回答、サイトに掲載できることが条件。

この記事や

非ブラック企業そろってます 厚労省認定、就職説明会:朝日新聞デジタル

「若者応援企業」は、厚生労働省が今年度から認定を始めた。条件は、(1)社員の有給休暇や残業時間の状況を公表(2)経営難による人減らしをしていない(3)採用内定の取り消しをしていないなど。

この記事。

 

企業が求人の際に、経営ポリシーや求める人材像といった定性的な情報ではなく、定量的な労務情報の提供を始めたことは画期的なことだ。日本の歪んだ労働慣習の権化であるブラック企業をなくしていくためには、労働基準法の適正な運用ももちろん、一方でこうした情報開示によって企業と労働者の間の情報の非対称性をなくしていくことも肝要になる。労働者が正しく企業を選別できる環境を作り出すことできれば、市場の原理に従って自ずと不法に労働者を搾取する企業は退場を余儀なくされるだろう。ブラック企業対策としてどちらがコストパフォーマンスがよいかといえば、後者であると考える。

 

雇用における情報の非対称性が問題

労働とは豊かな社会を享受するために個々人がそのコストの一部を請け負う税金のようなものだと私は考えているが、人によっては「ありがとうを集め」るためでもよいし、「グローバルカンパニーとして世界に勝ち抜く」ためでもよいと思っている。企業の指針を理解し、また正確な労務環境を知ったうえで納得するのであれば、あとは個人の自由であり、劣悪な労働環境であっても得るものは多いだろう(私もありがとうを集めたい)。問題は、半ば騙されたような形で就職し、その世界のみをすべてと思い込み、または職歴が汚れるのを恐れ、厳しい環境の中で自身を壊していっているという現実にある(まぁしかし法律は守ろうね)。

 

企業版エントリーシートという提案

上記ニュースの取組みについて、どのようにしてそれら情報の真偽を問うのかわからないが(大阪のニュースは厚生労働省認定とあるのである程度関与していると思われる)、以下のような情報を企業側に開示させ、企業のエントリーシートとして、求人の際の提出させてみてはどうだろう。

 

  1. 時間外勤務時間の中央値
  2. 有給休暇の取得日数の中央値
  3. 労働組合の有無
  4. 36協定ほか労使協定の有無
  5. 労基署による定期監督実施の有無または直近実施の時期
  6. 労基署による申告監督実施の有無
  7. その際の指導や是正勧告の有無
  8. 従業員の平均勤続年数
  9. 従業員の離職数
  10. 大量雇用変動届の有無

1と2については企業の自己申告になるが、それ以外はすべて厚生労働省が現時点で保持している情報だ。厚生労働省側で分散しているこれら情報をデータシート化し、企業側の許可があればこれら情報を証明書といった形で開示するできるようにする。これら情報について企業としては何一つ開示を拒む理由はないと思うが(企業機密だろうかこれ)、ここはひとつ情報の開示は義務ではなく任意としてもよいと考える。情報を開示しない企業については、ESのこれらの情報が空欄のままであることになり、ひとつの目安としてはわかりやすいだろう。

 

就職活動者は就活に際してさまざまな情報の提供を求められる。この一部を企業側に課していったい何の問題があろうだろう。