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どちらに相談すべき?労働基準監督官と社会保険労務士

 

労働者側に立ってその権利や労働条件を守る「労働基準監督官」と、経営者側でそれに対峙する(と一般的に思われる)「社会保険労務士」について整理してみました。

 

 

労働基準監督官とは

労働基準監督官とは、日本の労働関係法令に基づいて、あらゆる種類の事業場に立ち入り、労働基準法や労働安全衛生法等を遵守させるとともに、労働条件の向上を図っていくことを任務とする厚生労働省の職員である。労働基準監督官 - Wikipedia

 

労働基準監督官とは、

  • 国家公務員
  • 厚生労働省の下部組織である労働基準監督署に配属
  • 司法警察職員

労働基準監督官は犯罪を捜査し、被疑者を検挙し、検察官に送検を行うことができる司法警察職員です。

 

労働基準監督官は何を監督するか

「労働基準法」「安全衛生法」など労働者を守る法令に違反がないかを監督します。「サービス残業」や「名ばかり管理者」の摘発もその対象です。


違反の可能性がある場合、労働基準監督官はその事業場(オフィスや工場等)に立ち入り監査(臨検)を行います。臨検には以下の2種類があります。

 

定期監査と申告監査

労働基準監督官の事業所への立ち入り調査には、定期的・計画的に行う「定期監督」と、労働者などからの法令違反の申告により立ち入る「申告監督」があります。

いずれも事前通知をする場合が多いようですが、申告監査の場合は事前通知なしで突然事業場に訪れることもあるかもしれません。

労働基準法第101条・労働安全衛生法第91条などにより、事前の予告なく事業場に立ち入ったり、関係者への質問、帳簿や書類その他の物件の検査などを行ったりすることができる。事業場に立ち入るときは、特に通知する必要は無く、また、犯罪捜査が主体ではないことから、捜査令状の必要も無い。労働基準監督官 - Wikipedia 

 

定期監査を受ける場合

会社として法律に定められた所要の手続きを適切に行っていない場合にターゲットにされます。また特別条項付き36協定を締結した事業場については、長時間残業の温床になりやすいため定期的な監査のターゲットにされるようです。

  • 就業規則や36協定などを労基署に届け出ていない会社
  • 特別条項付き36協定(限度基準を超える長時間の残業を合意する特別な協定)を届け出ている会社
  • 過去数年のうちにに労基署から是正勧告を受けている会社

 

申告監査を受ける場合

申告監督はたいてい会社とトラブルを起こして辞めた従業員が労基署に申告(いわゆる労基への駆け込み)し、その信ぴょう性が確かであれば行われます。退職者が相次いだ場合、申告監査の可能性は高まると言えるでしょう。

 

監査(臨検)の主な流れ

調査は突然会社に監督官が訪れる場合もあれば、事前に連絡をしてきて調査の日時を指定されることもあります。資料を持参のうえ監督署に呼び出される場合もあります。

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監査する内容

調査の流れは、まず出勤簿や賃金台帳、賃金規程などに基づいて賃金や残業代の未払い等がないか調べていくのが通常です。そこで未払い等が発覚すれば、「対象者全員を調べたうえで過去3ヵ月~2年分さかのぼって全額支払いなさい。」という指導をうけることになると思われます。

 

労働者の申告を受けての調査であれば、当該違反事項について尋問を受けることになります。尋問は経営者や担当者だけではなく場合によっては現場のその他従業員に及ぶこともあり得ます。

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臨検の結果、関係法令に違反が見られた場合には、事業主は「是正報告書」「改善報告書」の提出が必要になります。

 

それでも改善が見られなければ

労働基準監督官は司法警察職員ですから、悪質な経営者などについて逮捕、送検の処分を行うことがあります。

全国の年間送検事件数は、特別司法警察職員の中では海上保安官の次に多い。平成16年の送検事件数は1,339件。労働基準監督官 - Wikipedia 

 

労働基準監督官は何人いるの?実績は?

  • 労働基準監督官は、2,941人(※本省23 人、労働局444 人、労働基準監督署2,474 人/実際に臨検監督を行う監督官は、管理職を除くため2,000 名以下となる)(H22年厚生労働省発表)
  • 検査件数は労働基準監督署によると年間175,532件(H24年)

 

これら体制及び実績は諸外国と比較して十分なものとはいえず労働者保護の体制強化が望まれます。

 

日本の労働行政の定員はもともと、他の先進諸国に比べて極端に少ない現状にあります。
全国に1 人でも労働者を使用する事業は約409 万事業場の臨検監督を実施する場合、監督官1人あたりにすると1,600 件以上で、平均的な年間監督数で換算すると、すべての事業場に監督に入るのに25~30 年程度必要な計算となります(※平成22 年度は174,533事業場を監督し、監督実施率は4.3%)。 雇用者1 万人当たりの監督官数で比較すると、日本は0.53 人となり、アメリカを除く主要先進国と比して1.2 倍~3.5 倍の差があります。平成20 年度に実施した監督の労働基準法等の違反率は68.5%であり、3 分の2 以上の事業場で法律違反があることから、日本においては労働者の労働条件が十分確保されているとはいえない状況です。出典

 

一方、社会保険労務士とは?

社会保険労務士とは、労働関連法令や社会保障法令に基づく書類等の作成代行等を行い、また企業を経営して行く上での労務管理や社会保険に関する相談・指導を行う事を職業とする為の資格、およびそれを職業とする者をいう。社会保険労務士 - Wikipedia


社会保険労務士(社労士)とは

  • 国家資格
  • 主務官庁は労働基準監督官と同じ厚生労働省
  • 独立して社労士事務所を営業したり、社内で人事・労務といった業務に勤務社労士として携わることもある。

 

社労士は何人くらいいるの?

H23年時点で社労士は全国で36,316名が登録されています(出典:労働基準監督年報)

 

主な業務は?

企業と顧問契約を締結し、その企業の人事・労務等に関する諸業務(書類や名簿の作成・提出)を代理します。これら業務については法律上、社労士のみが取り扱うことができる独占業務だからです。

また「特定社労士」については、労使間における労働関係の紛争において、裁判外紛争解決手続制度に則った代理業務に従事することを認められています。

 

労働基準監督官と社労士は敵対関係?

そもそも労働基準監督官も社労士も労働関係法令の適切な運用を実現し、弱い立場である労働者を保護するという同じ役目を担っているはずです。その管轄も同じ厚生労働省です。

しかし、社労士についてはどうしてもその顧客が「経営者」であるケースが多く、結果的に経営者の立場にたった活動になりがちです。

社労士の中にも弱い立場である労働者を守る活動を積極的にされている方も多くいます。サービス残業などで困った場合は社労士事務所に相談されてみるのもひとつの方法でしょう。

 

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