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社畜を飼うリスク

朝日新聞デジタル:「サラリーマンなので…待つ」 通勤・通学の足も混乱 - 社会

 

この記事。

 

いかにも日本的な風景だと苦笑いしてやり過ごすのもいいが、今回は社労士受験資格フォルダーとして関連法令の側面から語ってみたい。

 

だれでもわかる労働安全衛生法

 第1条(目的)

 要約:労働者の安全と健康をしっかりと確保しなさいね。

 

 第3条(事業者等の責務)

 要約:会社には労働者の安全を確保する義務があるよ。

 

 第4条(労働者の責務)

 要約:労働者はルールを守って会社の取り組みに協力してね。

 

…だいたいこんなかんじだ。会社にはそこで働く従業員の安全を守る義務と責任があるのである、法律的に言って。

 

翻って上記の記事にある会社の対応はどうだろう。仮に通勤中に飛来物で怪我すれば間違いなく労災(通勤災害)になる。こうしたリスクを少しでも意識した上での「無理しないでいい」という曖昧な指示なのだろうか。「明日の午前は会社に来るな。解雇するぞ」くらい言うべきではないだろうか。相手は年季の入った訓練された社畜なのである。

 

…と、いつになく余裕がない感じなのには訳がある。恥ずかしながら、筆者が働いている会社でも今回の台風をお迎えするにおいて明確な行動指示がなく「十年に一度とか言われているので十分に注意してください」といった文書がグループウエアに掲載されただけだった。

 

「十分に注意してください」。メール末尾の「よろしくお願いいたします」くらい無意味な文言である。

 

このことで上長に対応を確認したところ「それじゃあ自主判断ですかねぇ」などというさらに事態を複雑にさせる回答が返ってきた(もちろん著者も「ですかねぇ」などと言ってニヤついていたわけだが、頃合いを見て午前半休の申請を出してやった)。

 

こうした対応は社畜たる従業員の自主的判断に任せてはいけない。曖昧ではいけない。業務の必要性があるのならホテルを取るなり会社に泊まらせるなり明確な指示を行うべきだ。「来てしまった…」とか危なすぎる。そのくせすぐ死ぬし。百歩譲って任せるのであれば、最終的な責任は会社が負うことを覚悟すべきだ。

 

こうした、もう恥ずかしいくらい超基本的なリスク管理もできない会社に将来があるだろうか、いや、ないな。

 

成功する会社が必ずやっているリスク管理 (幻冬舎ルネッサンス新書 う-2-1)

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