三つ数えろ

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攻殻機動隊に見る最も生産性の高い組織とは

 

生産性の高い組織

 

本気で独立するなら己の部隊を持つがいい。規定によれば部隊の最小人数は、指揮官1名に隊員6名だ

 

攻殻機動隊ARISE 見ました。私は精神的・心理的世界描写が多い作品というのはあまり好きではないのですが、珍しく素子の柔らかい心の描写があり、新鮮で面白かったです。

さて、ある場面で荒巻課長が、素子に上記のような言葉を投げかけるシーンがあります。これを聞いてある書籍を思い出した。

 

プロジェクトリーダーのための入門チームマネジメント

プロジェクトリーダーのための入門チームマネジメント―6人で9人分の仕事をする組織最適化の法則 (PHPビジネス選書)

プロジェクトリーダーのための入門チームマネジメント―6人で9人分の仕事をする組織最適化の法則 (PHPビジネス選書)

 

 

今ではもう絶版になっているみたいですが、中古で購入することができます。「入門チームマネジメント」は、チーム編成とその運営について書かれた本ですが、こうした本によく見られる概念的な教訓や「信頼」「モチベーション」といった精神論的な要素はほとんどなく、「最も生産性を発揮する構成数」であるとか「心理特性から見たメンバーの組み合わせ方」について書かれているものです。チームメンバーを部品のように扱うところが私好みで、科学的とまではいいませんが、理論的で納得できるところが大きく、面白かった。

 

理想のチーム構成数は7人

同書によると、米海兵隊で大規模な調査を行った結果、チームの生産性がもっと高まるのは、同質型チームで6名、補完型チームで8名構成でした。ここから海兵隊の理想的な自己完結型チーム(補完型)は、上記の荒巻課長の言葉どおり、指導者1名の隊員6名、計7名とされています(海兵隊組織についてはさらに1Staff2Job つまり全員がライフルマンでありながらもう一つの役割も果たすことが求められる)。この「7」がチームとして最小限かつ理想的な形ということです。

 

心理的特性でいうと、素子やバトーはリーダーシップ型かタグボード(牽引、突破)型、トグサはマネジメント型よりのタグボード、イシカワやサイトー、ボーマ、パズはアンカー(業務遂行)型なのかもしれませんし、攻性部隊ということで、課長以外の全員がリーダーシップやタグボードもしれません。

 

さて、googleが以前発表した資料「強い絆、弱い絆」によると、強い絆と呼ばれる日常的に深いコミュニケーションを行う人間関係は一般的に5人(本人+4人)であると述べられています。携帯電話の利用の80%がこの4人への利用ということです。また、Facebookなどでも日常的にコミュニケーションするメンバー数は4〜6人であると書かれています。

 

このあたりからも本人を含めた5人〜7人という人間関係の空間が最小単位のチームとしてはもっとも生産性やコミュニケーション性が高い単位なのでしょう。

 


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組織の最大規模は150人

 

一方、最大値はどのような規模になるのでしょうか。前出の入門チームマネジメントによると、7人の1ユニットを6〜7セット揃える合計50人以下の組織が理想とされています。7人の7倍という理論ですね。経験的にもベンチャー企業まどはだいたい50人規模で一つの成長の山を迎えることが多いように思います(もっとも効率のよい人数であるとも言えます)。

 

また、googleの資料においては、タンバー数を取り上げています。ロビン・ダンバー博士の提唱したもので、人間にとって、平均約150人(100-230人)が「それぞれと安定した関係を維持できる個体数の認知的上限」であると述べています。顔と名前を覚えられる限界数といってもいいかもしれません。Facebookでの平均友人数は130人ということや、古代ローマ軍のマニプルスもこの規模の組織でした。

 

7人の「課」と、7つの課が合わさった50人規模の「部」、この部が3つ合わさった150人規模の「個社」が一人の社長が運用する一組織としては生産性を失わず運営できる最大値と言えるでしょう。もっともこのようにきれいに人員を分配できることは稀であると思いますので、以下のように構成してみてもいいかもしれません。

  • 業務の最小チーム単位は5名以上10名以下
  • 7名1セットの7セットである50名がひとつの業務的役割としての最大数とする
  • 経営層についても社長を含む7名をボードメンバーとする(googleも意思決定は10人以下で行えと行っています)
  • ひとつの事業体としては150名を上限する

以上、机上の空論でした。 

日本の会社の組織を振り返って

さて、日本の職場を見回してみるとどうでしょうか。中高年社員の職位(ポスト)を用意するため、極端な話、部長1名、課長1名(部長が兼任)、課員2人の4人体制の「部」というようなものも見受けられるかもしれません。この辺りは以前、なぜ上司は「無能」なのか? - 三つ数えろ でも述べた日本の昇進制度の歪みが原因にあるのですが、何れにしても必要以上に細分化した、または極端に肥大化した組織が、日本のオフィスワークの生産性を下げている要因であることは間違いないと思います。皆さんの組織はいかがでしょうか。

 

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