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正社員、非正規社員、派遣社員の違いを図解解説

 

派遣法改正

 

派遣労働、全ての職種で無期限に 厚労省が法改正の方針:朝日新聞デジタル

 

この記事。

 

労働関連のニュース記事を読むと「正社員」「限定社員」「非正規雇用」や「有期雇用」または「派遣労働」という様々な用語が登場しますが、それぞれ法律的な位置づけや定義が違っていて正確に把握しないとその背景が理解できません。記者は正しく区別がついているのか不安になる記事もありますが、私もその意味するところの理解が心もとないため正しい用語の定義を整理してみましょう。

 

関連法令における区分

まず労働基準法では正社員や非正規雇用といった定義はなく、同法が区別するのは労働者の雇用期間についてです。3ヶ月や1年といった有期雇用を基本として「期限を定めない」という例外的な位置づけとして無期限雇用(いわゆる正社員)があります。

 

 一方、労働者の派遣については事業としての定義があり、労働者派遣法では「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ当該他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることを業として行うこと」とされています。

 

「常用型」と「登録型」の二つの労働者派遣

さらに労働者派遣には「常用型」「登録型」があります。常用型は派遣元に無期限で雇用されていており派遣先が決まっていない時も労働者といての雇用が保証され賃金が支払われます。大規模なシステム開発の現場で二次請が元請けに技術者を派遣するような場合(常駐SE)がこれにあたり、この場合、その労働者は正社員です。

 例:富士通の社員がみずほ銀行に技術者として派遣される

 

一方、登録型は派遣先が決まった場合のみ派遣元と有期雇用契約を結ぶもので、給与もその派遣期間のみ派遣元から支払わます。一般に派遣労働者という場合、この登録型派遣を指します(派遣労働者の8割がこちらです)。

 

図解 

図解してみましょう。

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派遣労働という営みの対比語として「直接労働」としましたがこれは造語です。一般的に「非正規雇用」という場合は、グレーに色付けした「期限の定めがある」雇用契約を指すことが多いと思います。

 

有期雇用についてはその期間の上限は原則3年間です。これは不当な人身拘束的雇用契約を防ぐための規定ですが、再契約(更新)は可能です。一方、労働者派遣については派遣の適用期間の上限はある業務につき3年間とされています。今回の派遣法の改正については上図で赤枠囲みした派遣労働の上限3年を無期限にするということです。つまり、

 

  1. ある業務(例:ユーザーサポート業務)に派遣労働者をあてることができる期間を無期限にする(現在は3年が上限)
  2. 一方、ひとりの派遣労働者が同じ職場で働ける期間は3年にする(現在は業務を替えれば延長可能)

 

法律改正の主旨

今回の改正の主旨はなんでしょうか。

 

これまで派遣労働は、直接労働ではまかないきれない一時的・突発的に発生する業務への対応として例外的に認められてきました。あるべき姿としてはあくまで全員が直接労働でした。

 

しかし今回の改正では、この方針が転換され「派遣がやる仕事」の存在が法律的に認められ、雇用の中心が「人」ではなく「職務」に移行しています。つまり人(ヒューマンリソース)に職務(ジョブ)を当てるといった従来のメンバーシップ型労働から、ジョブにヒューマンリソースを当てるというジョブ型労働への変遷がその背景にあります。

 

今後その流れは否応なく正社員にも波及するでしょう。そしてその流れは正しいのではないかと私は考えています。