「役員」はサラリーマンにとっての一応のゴールではあるが、さて、専務と常務はどちらが偉いのだろうか。どちらも偉くないという意見は前提として認めつつも、席次などを調整する際に知らないと命取りになる役員の序列について整理してみた。
役員の位置づけ
まず基本を整理してみよう。会社法における役員の位置づけを以下に図式化してみた。
まず役員は従業員ではない。ゆえに労働基準法にも守られない。従業員から叩き上げての役員成りにあたっては、彼らも従業員であることを辞する必要がある。つまり役員とは経営や執行について、その法人と準委任契約を締結した出入り個人事業主だと位置づけられる。
会社法(施工規則含む)では、役員等として取締役、会計参与、監査役、執行役、理事、監事といったものが規定されているが、ここでは馴染みのある取締役とやや複雑な執行役を取り上げてみよう。
取締役とは
取締役は会社経営について重要な判断を行う機関である。職位ではなく機関であり、言葉としての意味合いは「取締役会メンバー」に近い。
個人としての取締役はこの機関に所属する経営専門業者ということになる。三国志でいえば君主やその周りの荀彧や孔明といった政治力型の文官達になる。
執行役とは
次に執行役とは業務執行をおこなう機関であり、こちらも職位ではない。
個人としての執行役はこの機関に所属する業務執行業者ということになる。執行役は業務遂行に特化した役員なので、会社経営には関与しない。三国志でいえば脳筋将軍ややたら戦術スキルを持った郭嘉や陸遜といった軍師達がこれにあたる。
取締役と執行役を比較した場合、経営に参画するという意味で取締役の方が偉い。
代表権とは
役員の序列を決定する上でもうひとつ大切な要素として代表権というものがある。これは個人として法人の意思を代表することができる権限で、身近なところでは法人同士の契約における契約書の記名欄等には代表権のある役員の氏名を記載することが一般的だろう。
しつこいくらいに三国志を例に出すが、劉備の入蜀初期は、蜀の劉備と荊州の関羽による実質的な2トップ体制の時期が5年ほどあったが、この期間について、関羽のついても蜀という国についての代表権があったと言える。
会社の代表者であるから、代表権のある役員はない役員よりも偉くなる。
役員と職位の関係
さて、これら役員とは別に、会長や社長、専務や常務という職位がある。職位には法律的な根拠及び順位はなく、基本、個々の会社のローカルルールよって定められる。
つまり専務と常務がどちらが偉いのかという質問については「同じ取締役であれば会社による」というのが回答になる。
ただし、一般的には上図に並べたとおり、会長、社長、副社長、専務、常務、職位なしの役員(平役員)の序列になるようだ。 辞書によると
専務とは株式会社の役員の一。通常、社長を補佐して会社の全般的な管理業務を担当する。また常務とは株式会社の役員のうち、社長を補佐して会社の日常の業務を担当する役職。
とある。こうした意味付けでは専務はどちらかというと経営、管理よりの役員。常務は事業、現場よりの役員ということになる。取締役と執行役の関係に近い。
専務と常務、英語では?
専務はSenior Managing Director、常務はManaging directorと英訳が当てられている。ここからもSeniorな分だけ専務が格上であることがわかる。
一般的には専務は常務よりも偉いということを覚えておこう。別に覚えておこなくてもいいが、役職者はこうした違いを誰よりも気にするものである。下手すると、あなたのサラリーマン人生が終わる、わりと簡単に。
執行役と執行役員
ややこしいのは執行役と執行役員だ。執行役については前述の通り法律上規定のある役員であるが、執行役員は職位のひとつであり、ヒラ役員であったり従業員であったりする。
なぜこのような混乱が生じているかというと、企業経営のうえで「決めた責任」と「やった責任」を明確にする必要性の中で、法改正に先駆けて1998年にソニーなどが経営判断(取締役)と業務執行責任を切り離す「執行役員」の導入を始めた。この後、2003年の商法改正で晴れて法律的に「役員としての執行役」の規定がなされたが、この間5年のローカルルール運用がいびつな形で残存しているからだ。
今となってはこのように曖昧な存在である執行役員であるが、執行役心得従業員。または上級部長のような意味合いだと理解すればいいかもしれない。また企業によっては「専務執行役員」という肩書きもあるようだが、これは異なった職位を並列しているので理屈的にはおかしい(次長課長という役職のようなものだ。正確には執行役専務だろう)
まとめ
ここまでの話をまとめると次の図のようになる。
取締役専務は執行役社長よりも偉い。取締役常務は執行役専務よりも偉い。取締役専務は取締役常務よりも一般的に偉い。…はずだが、どこまで厳密に運用されているかは知らない。
顧問とは
最後に顧問とはなにか。これも明確な定義があるわけではない。一般的には取締役でも執行役でもない。このポジションは実は役員を退任した元役員が、翌年の住民税を滞りなく支払うための猶予期間として、その切実な要請から設定されたもののようだ。相談役も同じようなものだろう。なるほどねえ。
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