三つ数えろ

労務管理 人事評価 組織設計

「売上」と「利益」どちらが大事か?という議論について

 

売上と利益

 

しゃべりとパワポがほんの少し得意なためか、サラリーマン生活の大半を事業企画部門で過ごしてきた。もちろん期待された能力を持ちうるはずもないため結果はなに何一つ残していない。もっともゆるりとした坂道を下りつつある日本的企業の経営層は得てしてこうした実を結ばぬ挑戦を好むものである。結果としてなんら処分も受けず、昇進し、今日も今日とてのうのうと雲をつかむようなお話を、ほらごらん、あの雲は夢という字に見えませんか?とうそぶく日々だ。

 

事業企画では、事業収支計画なるエクセルを作成するが、数字を組み立てる段階になると、必ずと「売上か利益か」という議論がメンバー内でおきる。事業企画にかかわらず、営業部門でもこの手の議論は繰り返されるように思う。

 

上席への相談の結果はいつも同じ「もちろん両方だ!」(ですよねぇ)。

 

単純に考えれば、利益額がすべて、であるように思える。しかし利益は売上がなければ生まれない。今日はこの「売上と利益どちらが大事か」という点について少し整理したい。

売上とは何か

売上とは提供する商品(サービスなり物品なりをまとめて以下、商品とする)を顧客が購入した、その成果の総和である。

 

利益とは何か

利益とは売上からその商品の原価と販管費(人件費や広告宣伝)を差っ引いた引いたものである。

 

このように売上と利益は分かちがたく、上席の言う「両方だ」という言葉はもっともだ。鶏よりも先に卵は生まれない。周知の事実であるはずだから、そこに議論の余地はないはずである。つまり、このミクロな視点でしっくりこないのは、別の視点があるからだろう。

 

マクロ視点で売上と利益を考える

売上とは、その商品がターゲットとしている市場において、自社商品のシェアを示す指標である。一般に市場規模とはそこに参入している企業の売上総和で導き出されるからだ。つまり売上とは市場(顧客のニーズ)の規模と成長性を分母にして、自社の商品がどの程度そこに応えられているかというマーケティング指標といえる。

 

一方、利益とは、その商品が参入した市場で新たに創造した価値のことである。単純な話、同じ商品でも他社より二割安く仕入れる仕入先を見つけることができるというだけで、その商品の付加価値二割増す。つまり利益はその商品の革新性、独自性、強みの指標となる。売上がマーケティング指標ならば利益はサービスやプロダクトのコンピテンシー指標であるといえる。

 

この視点では、売上と利益は直接繋がりのない別々の意味合いをもった因数となる。売上は総額よりも成長率に重要視するべきだし、利益については、特に新事業であれば先行投資的な販管費をどう捉えるかという点が重要になる。どちらが大事かという議論が起こるのは、この二つの視点を混同する、というよりは二つ目の視点をうまく言語化できていないことが原因だと思われる。

 

「売上」と「利益」どちらが大事か?

事業において、売上が拡大するも、利益が生まれない段階がある。逆に売上は低迷するが、一定の利益がある段階もある。これをプロダクトライフサイクルという。売上か利益かの議論はその事業なり商品が、プロダクトライフサイクルのどの段階にあるのか、という認識のうえの戦略的な判断だ。しかし当事者にはその正確な段階を認識することはむつかしいし、春は永遠に続くと信じる経営層も多く、さらにミクロな視点とマクロな視点を区別できていないため、このようなよくわからない議論が続くのである。日本人は70年前から撤退が下手なので、さもありなん。現場は疲れるね。

 

こちらの記事も読まれてます ▼

count3to1interrupt.hatenablog.com

count3to1interrupt.hatenablog.com

count3to1interrupt.hatenablog.com