三つ数えろ

日本人の働き方とか社会保障についてせん妄状態で記述していきます

事前申請?みなし労働時間制?「残業」にまつわる5つの都市伝説

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まことしやかにささやかれる残業にまつわる5つの都市伝説。

 

まず日本の労働法制度上、管理監督者などをのぞき従業員が「タダ働き」する(または、させる)余地はありません。しかし、ここには労使ともに5つの(「使」についてはいささか確信犯的な)誤解がありますので、整理してみましょう。

 

 

 

 

都市伝説1:事前申請のない残業は無効

残業の「事前申請制度」を実施している企業は多いと思います。しかしこの制度はいわゆる「付き合い残業」の抑止的意味合いをもつ制度でしかなく、事前申請のない残業は認めないという主張の法的根拠は非常に弱いものです。そもそも残業を労働者が「申し出て請う」のもおかしな話。逆だろ、と言いたい。

もちろん申請なしの残業は「残業するときは事前に申請すること」という企業のローカルルール違反ですので労働者として褒められるものではありません。ただそれと残業代の出る出ないの話は別です。付き合い残業を根絶したければ責任者が「帰れ」と言い続ければ済む話で、そういった意味では管理職の負うべき労務管理コストを平社員に押し付けているだけでしかありません。

 

都市伝説2:「みなし残業制度」

みなし残業制度とは一定の時間を残業したとみなす制度です。労働基準法で規定された制度ではなくあくまでも企業のローカルルールです。この制度は「これまでの実績などからこの業務に携わる従業員は一ヶ月に約X時間残業を行う、であれば、ここはひとつ諸手続きの簡略化のため残業したとみなそう」という労務運営上の制度です。ポイントとしては3つあります。

 

  1. みなされる残業X時間は就業規則などで定め、みなし残業代は適正な時間外労働の対価として計算されることが必要。
  2. 残業がX時間を超えた場合、その超過分は残業代して追加で支払う必要がある。
  3. X時間を超えない場合であってもX時間残業したとみなすことが必要。

企業にとってはほとんどメリットのない制度になります。

また残業代と基本給の区別がよくわからないものや、残業代の支払いを回避するために基本給をその分引き下げるような制度は、残業代を支払ったと言えませんので違法です。あくまで残業代を効率的に支払うための制度と理解してください。

 

都市伝説3:「みなし労働時間制」

みなし労働時間制(正確には「事業場外みなし」と「裁量労働制」)とは、労使協定の締結や就業規則への記載など一定の要件を満たした場合に、実際に労働した時間ではなく、予め労使で定めた時間Xを働いたものとみなす制度です。「X時間働いたとみなそう」という制度ですのでX時間以上働いてもX時間働いたとみなされます。ただし、逆にX時間以下の労働であってもX時間働いたとみなされます。サービス残業の温床にもなりかねない制度ですが、それを防止するためその採用にはいくつかの要件があります。

 

  1. 会社が従業員の労働時間の把握が困難であること(事業場外みなし)
  2. 業務遂行の手段及び時間配分の決定等に使用者が具体的な指示をしないこと(裁量労働制)

 

また上記2については、対象となる業務も「エンジニア、編集者、デザイナーやコピーライター」など19職種に限定されています。また職種が該当していたとしても、プロジェクトなどでリーダが適時指示を行っているような場合、裁量労働制は適用できません。社内において会社の指揮命令の外にいる、今の筆者のような企業内スナフキンのみが適用を受ける制度になります。導入には労使の合意が必要であり、簡単に導入できる制度ではないことも覚えておきましょう(他にもいろいろ決まりがあります)。

 

都市伝説4:年俸制では残業がない

日本の労働法制上「年俸制」について特別な規定があるわけではありません。役員については役員報酬という年俸制に近い形が取られていますが、役員はそもそも従業員ではありません。

 

年俸制とは硬直的な日本従来の賃金制度ではなく「予め1年間分の賃金を交渉・合意によって決める」賃金に関する制度であり、労働契約に関する特例的な制度ではありません。なので、年俸制であっても1日8時間以上働けば普通に残業代が発生します。

 

都市伝説5:完全歩合制

日本の労働法制において「完全歩合制(フルコミッション)」という雇用体系は存在しません。労働基準法(第27条)においては「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定められています(一般に6割程度の保証が必要です)。完全歩合制で働いているといった場合、おそらくそれは雇用契約ではなく、請負契約です。つまりあなたは業者であって労働者ではありません(怖い)。

 

厚生労働省「就労条件総合調査」によると、平成23年1月1日現在、みなし労働時間制を採用する企業数の割合は11.2%、種類別では、「事業場外労働」を採用している企業数の割合が9.3%、「専門業務型裁量労働時間制」が2.2%、「企画業務型裁量労働時間制」が0.7%となっているようです[みなし労働時間制 - Wikipedia]。一般に内勤のエンジニアやデザイナといった職種が該当する裁量労働制は「専門業務型」になります。御社はどうでしょうか。

 

自分の時間、お金、権利を守る! 「武器」としての労働基準法

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